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長崎地方裁判所佐世保支部 昭和34年(む)577号 判決

被疑者 須賀多喜次 外一名

決  定

(被疑者氏名略)

右の者等に対する公職選挙法違反被疑事件につき、長崎地方裁判所佐世保支部裁判官浅野達男が昭和三十四年五月十一日なした検察官の接見禁止等請求に対する却下決定に対し、検察官から別紙の理由に基き準抗告申立があり、当裁判所は右申立を理由があるものと認めて次のとおり決定する。

主文

長崎地方裁判所佐世保支部裁判官浅野達男が昭和三十四年五月十一日なした接見禁止等請求却下の決定は之を取消す。

右被疑者等と刑事訴訟法第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見及び書類又はその他の物(但し、洗面具を除く)の授受を禁止する。

(裁判官 立山潮彦 林繁 森永竜彦)

別紙

検察官の申立理由

本件発覚の端緒となつた受供与者一色利之の自首は被疑者等との利害関係の紛争から右一色をして寝返りをなさしめた結果表われたものであつて右自白については充分な検討をなさずして之を全面的に信頼する事が出来ない又同人は被疑者両名と姻戚関係にあり一時の興奮から反目し両者自白するに至つたとは言い乍ら何時又歩調を合せてその前言を翻し否認の挙に出るやも測りしれない不安な状態にあるばかりではなく被疑者両名は父娘の間柄にあり候補者渡辺俊とは取引上特種な関係にあり且被疑者須賀多喜次は同選挙の総括主宰者として運動事務全般を掌り同ミスエも又出納責任者として同選挙運動における実質上の実権を把握して行動したものであつて同候補者とは密接不離の関係にあり同候補者の死命は一にかゝつて被疑者両名の今後の供述にあるものと思料される処連座制の強化された新公職選挙法の見地から偶々今回の選挙に当選した同候補が自己の失脚を憂慮する余り勾留中と雖も同被疑者等と有無相通じ罪証の湮滅を謀る虞は充分考慮されるので右通謀を阻止するため刑事訴訟法第四二九条第一項二号を以て本件準抗告に及んだ次第である。

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